知っていますか?犬と猫の肛門腺トラブル|見過ごしがちな重大疾患 - ドクターオザワ動物病院 八王子・町田・入間

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犬や猫の健康管理において、肛門腺(肛門嚢)の重要性を意識したことはありますか?肛門腺は、肛門の左右に位置する袋状の構造で、独特な臭いのある分泌液を溜めています。この分泌液はマーキングや個体識別に使われる重要な役割を果たしています。

しかし近年、犬猫の肛門腺トラブルが増加しており、特に猫では肛門腺が破裂して穴が開くケースが多く報告されています。このような状態は犬や猫に強い痛みを与えるだけでなく、長期間の治療を必要とするため、早期発見と適切なケアが不可欠です。

今回は犬や猫の肛門腺について、基礎知識やよくある症状、治療方法、予防方法などを解説します。



■目次
1.肛門腺の基礎知識
2.肛門腺の主な疾患
3.よくある症状
4.診断方法や治療方法
5.予防と日常のケア
6.まとめ


肛門腺の基礎知識

肛門腺とは分泌液を溜める器官であり、マーキングや個体識別に利用されます。この分泌液は犬や猫の体調や性格、環境に応じて異なる特性を持っています。

<犬の場合>
小型犬から中型犬にかけて肛門腺の分泌物が排出されにくい傾向があります。このため、飼い主様による肛門腺絞りが必要になることが多く、肛門腺トラブルが頻繁に発生します。

<猫の場合>
これまで肛門腺疾患は少ないとされていましたが、最近ではトラブルが増加しており、注意が必要です。

また、正常な肛門腺の分泌液は、さらさらとした液体や粘土状のものが一般的で、茶色っぽい色をしています。分泌物が異常に溜まったり、色や臭いに変化がある場合は、肛門腺の異常が疑われます。


肛門腺の主な疾患

肛門腺に関連する主な疾患は、以下が挙げられます。

<肛門嚢炎>
肛門嚢内に分泌物が過剰に溜まると細菌感染を引き起こし、肛門嚢炎が発生します。お尻を気にして舐めたり、床にこすりつけたりするような行動が見られる場合は注意が必要です。症状が進行すると、肛門付近から血や膿が出ることがあります。

<肛門嚢膿瘍>
肛門嚢炎が進行すると、肛門嚢が膿で満たされる膿瘍が発生します。触ると硬く腫れており、痛みを伴います。この状態では犬や猫が患部を触られるのを嫌がることが多く、化膿臭が漂う場合もあります。

<肛門嚢破裂>
膿瘍が進行し、肛門嚢が破裂すると肛門の横に穴が開くことがあります。この場合、血や膿が漏れ出し、強い痛みを伴います。破裂は、肛門腺が元々排出されにくい個体や、出口が炎症で塞がれた場合に発生しやすくなります。

<肛門嚢のアポクリン腺癌>
稀ではありますが、肛門嚢に存在するアポクリン腺という分泌腺から癌が発生することがあります。この病気は進行が速く、腫瘍がリンパ節や他の臓器に転移する可能性が高いため、早期発見と早期治療が重要です。


よくある症状

肛門腺トラブルの兆候として、以下の症状が見られることがあります。

<お尻を床に擦り付ける行動>
お尻を擦り付けたり、お座りしながらお尻を引きずったりするような動作は、肛門腺の異常を示す典型的なサインです。

<お尻を頻繁に舐める>
この行動は毛づくろいと誤解されがちですが、頻繁に行う場合は異常が起きている可能性があります。

<肛門周囲の赤みや腫れ>
肛門周囲が赤く腫れていたり、悪臭がしたりする場合は、トラブルが進行している可能性が高いです。

これらの症状を放置すると、肛門嚢膿瘍や破裂に至る可能性があります。そのため、早期発見・早期治療が不可欠です。


診断方法や治療方法

【診断方法】
肛門腺トラブルは触診や視診によって診断されます。肛門周囲の腫れや異常な臭い、触診による硬さの確認などを行います。

【治療方法】
肛門腺の治療は症状によって異なりますが、以下の方法で実施します。

<肛門腺絞り>
分泌物を排出することで症状が軽減する場合があります。

<抗生物質の投与>
細菌感染が進行している場合、抗生物質が処方されます。

<洗浄とドレナージ>
肛門嚢が破裂している場合、洗浄や排膿処置を行います。痛みを緩和しつつ治療を進めます。

肛門腺は治療を早期に開始することで、犬や猫の負担を最小限に抑えることができます。


予防と日常のケア

肛門腺トラブルを予防するためには、以下のような日常的なケアが重要です。

<定期的な肛門腺絞り>
排泄時に分泌物が排出されにくい個体の場合、1〜2か月に1回程度の肛門腺絞りを行うことが推奨されます。トリミングサロンや動物病院で適切に行ってもらうのも一つの方法です。

<肛門周囲の観察>
普段から肛門周囲の赤みや腫れ、異臭がないか定期的に確認しましょう。異常があれば早めに獣医師に相談することが大切です。

<健康診断の活用>
定期的な健康診断を受けることで、肛門腺だけでなく全身の健康状態を確認することができます。年1回の健康診断を習慣化しましょう。

健康診断についてはこちらから


まとめ

肛門腺トラブルは見過ごされがちな問題ですが、適切な予防と早期の対応によって防ぐことが可能です。愛犬や愛猫の健康を守るために、日常的な観察とケアを心がけましょう。

また、肛門腺の異常を放置すると、犬や猫に痛みや不快感を与えるだけでなく、長期間の治療が必要になることもあります。そのため、異常が見られたら早めに動物病院に相談し、適切な診断と治療を受けましょう。


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