犬のヘルニア治療の新たな選択肢|再生医療がもたらす可能性 - ドクターオザワ動物病院 八王子・町田・入間

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愛犬が「急に歩き方がおかしくなった」「抱き上げると痛がるようになった」と感じたことはありませんか?もしかすると、それは胸腰部椎間板ヘルニアや頚部椎間板ヘルニアといった「ヘルニア」のサインかもしれません。これらは犬によく見られる疾患で、ヘルニア部分が脊髄を圧迫することで痛みや後ろ足の麻痺が起こったり、重度の場合は歩くことができなくなったりすることもあります。

従来の治療は薬による保存療法や外科手術が中心でしたが、近年では「再生医療」という新しい選択肢が注目されています。「手術はかわいそう」と悩まれる飼い主様や、さまざまな理由で手術を選べない場合にも取り入れられる可能性がある治療法です。

実際に、当院では歩くことさえできなかった犬が、再生医療によって走れるまでに回復した例もあります。

今回は犬のヘルニアについて、基礎知識から、話題の再生医療による治療法、そして実際の症例までをわかりやすく解説します。



■目次
1.犬のヘルニアとは?
2.再生医療とは〜ヘルニア治療の新たな選択肢〜
3.当院での実際の治療症例
4.まとめ〜愛犬に最適な治療法を選ぶために〜


犬のヘルニアとは?

犬に多く見られるヘルニアとは、主に「胸腰部椎間板ヘルニア」と「頚部椎間板ヘルニア」のことを指します。これは背骨の骨と骨の間にある「椎間板」が飛び出してしまい、脊髄を圧迫することで痛みや麻痺などの神経症状を引き起こす病気です。

原因は加齢や遺伝、外傷などがあり、特定の犬種に発症しやすい傾向があります。たとえばダックスフンド、ビーグル、フレンチブルドッグ、シー・ズーなどは特に注意が必要です。

ヘルニアが発生した部位や重症度によって症状は異なります。

<胸腰部椎間板ヘルニア>
犬に見られるヘルニアの多くが胸腰部椎間板ヘルニアで、症状の重さによって5段階のグレードに分類されます。

グレード1:主な症状は痛みで、神経症状はみられない
グレード2:歩くことはできるが後ろ足がふらふらする
グレード3:麻痺が起こり、後ろ足を引きずる
グレード4:自分の意志でおしっこができなくなる
グレード5:深部痛覚がなくなり、足先の骨を強くつまんでも痛みを感じない

<頚部椎間板ヘルニア>
頚部椎間板ヘルニアの場合は、3段階のグレードにわけることができます。

グレード1:首を動かしたり抱っこされたりしたときに痛がる
グレード2:歩くことはできるがふらふらする
グレード3:自力で歩くことができない

主な治療法は、「保存療法(安静や薬物投与)」と「外科手術」があります。軽度の場合は保存療法の適用となりますが、2ヶ月ほど身動きがほとんど取れないような小さなケージの中で安静に過ごす必要があります。一方で、再発を繰り返す場合や重度の麻痺がある場合は外科手術が必要になります。

しかし、手術には全身麻酔のリスクや長い回復期間が伴います。特に高齢の犬や、持病のある犬では手術が難しい場合もあるため、飼い主様の中には「手術以外の方法はないのか」と悩まれる方も少なくありません。

そんな中で、近年注目されているのが「再生医療」です。

再生医療とは〜ヘルニア治療の新たな選択肢〜

再生医療とは、犬自身の自然治癒力を高め、損傷した神経や組織の再生を促す新しい治療法です。これまでの治療では改善が難しかった症状にも効果が期待できることから、注目が集まっています。また、椎間板ヘルニアだけでなく、頚部椎間板ヘルニアや他の神経疾患にも応用できる可能性があり、今後さらに治療の幅が広がると考えられています。

特に「幹細胞療法」は、犬の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、注射や点滴で体内に戻すことで回復を促す治療法です。この方法は傷が小さく済み、体への負担が少ない点も大きな特徴です。幹細胞の移植には、犬自身の細胞を使う「自家移植」と、ドナー犬から採取した細胞を使う「他家移植」があります。

さらに、最近では「ステムキュア」という、あらかじめ製造された幹細胞製剤を使用する方法も登場しました。これにより、専門的な培養設備がない動物病院でも、より手軽に再生医療を提供できるようになりました。

当院での実際の治療症例

ドクターオザワ動物病院では、再生医療を取り入れたヘルニア治療を行っております。ここでは、実際に治療を受けた犬の症例をご紹介します。

ある肥満のチワワが頚部椎間板ヘルニアにより歩行困難な状態で来院されました。診断の結果、手術が必要とされる状態でしたが、飼い主様は「手術はかわいそうで避けたい」と強く望まれました。そのため、当院ではステムキュアによる再生医療を提案し、慎重に検査を行った上で治療を開始しました。治療は1週間ごとに3回、点滴で幹細胞を投与するという流れで行われました。

初回投与から1週間が経つころには、少しふらつきながらも自分で歩けるようになりました。2回目の投与後はさらに安定した歩行ができるようになり、最終投与から約1ヶ月後には、以前のように元気に走り回る姿が見られるまでに回復しました。

もちろん、すべての症例がこのように回復するわけではありません。再生医療には個体差があり、効果にはばらつきがあります。また、治療には費用もかかるため、すべての犬に最適とは限りません

しかし、手術に不安を感じる飼い主様にとって、新たな治療の選択肢として希望を持てる方法であることは間違いありません。再生医療はまだ発展途上の分野ではありますが、今後さらに多くの症例に適応されていくことが期待されています。

まとめ〜愛犬に最適な治療法を選ぶために〜

再生医療は、犬のヘルニアに対する治療法の中でも、比較的新しく、注目されている選択肢です。手術や保存療法だけでなく、こうした新しいアプローチを知っておくことで、飼い主様はより多くの選択肢から治療法を選ぶことができます。

ただし、治療の選択は犬の状態やヘルニアの部位や重症度、飼い主様のご希望や生活環境を考慮しながら、その子その子に最適な方法を選ぶことが大切です。

ドクターオザワ動物病院では、症状に応じた丁寧な診断を行い、再生医療やリハビリテーションなど最新の治療も取り入れた治療プランをご提案しています。

もし犬の歩行や排尿に異変を感じた場合、あるいはすでにヘルニアと診断されて治療法に悩んでいる場合は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。初診のご予約やお問い合わせは、お電話または当院ホームページより承っております。

大切な家族の一員である犬が、再び元気に歩き、走れる日を目指して、私たちが全力でサポートいたします。


<参考>
https://bio-edu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/BioTech2022_%E6%98%A5%E5%8F%B7-03_%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E6%8A%80%E8%A1%93%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A.pdf


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