2025/07/08
特に「これは痙攣なのか、それとも何か別の異常なのか」「動物病院へすぐ連れて行くべきか、それとも様子を見てよいのか」と悩まれる飼い主様は少なくありません。実際に当院でも、このようなご相談を多くいただきます。
そこで今回は、犬や猫が痙攣や発作を起こしたときに慌てず適切な判断ができるよう、痙攣発作の見極め方や応急処置、受診のタイミングなどについて、わかりやすく解説します。
■目次
1.痙攣発作とは?どんな症状?
2.痙攣の原因はさまざま|「痙攣=てんかん」ではありません
3.痙攣が起きたときの応急処置
4.動物病院を受診する判断基準|いつ緊急受診すべき?
5.痙攣の診断と検査
6.まとめ
痙攣発作とは?どんな症状?
痙攣発作とは、自分の意識とは関係なく筋肉が勝手に収縮してしまう現象のことで、犬や猫においても比較的よく見られます。痙攣には主に以下の2つのタイプがあります。
<部分発作>
意識はしっかり保たれたまま、一部の筋肉だけがピクピクと小刻みに震えるような症状が見られます。たとえば片方の前足だけが繰り返し動いたり、顔の一部が引きつったりするようなケースが該当します。
<全身発作>
突然意識を失い横たわった状態で、全身の筋肉が硬直したり、手足を大きくバタバタと動かしたりします。ガクガクとした痙攣や、泡を吹くような仕草が見られることもあります。
なお、よく似た症状として「失神」もありますが、失神では全身の力が抜けてぐったりするものの、激しい手足の動きや震えは通常見られません。見分けが難しいこともありますが、発作の様子を記録しておくことで、診察時の大きな手がかりになります。
痙攣の原因はさまざま|「痙攣=てんかん」ではありません
痙攣と聞くと、「てんかん」を連想する飼い主様が多いかもしれません。しかし、痙攣の原因はてんかんに限らず、多岐にわたります。
代表的な原因には、以下のようなものがあります。
・てんかん
・低血糖(特に小型犬や子犬)
・中毒(例:チョコレートやタマネギの誤食)
・感染症(ウイルス性脳炎など)
・脳腫瘍
・神経疾患 など
このように、痙攣が起こる背景にはさまざまな病気が潜んでおり、原因によって治療方法は大きく異なります。そのため、「痙攣した=てんかんだから様子を見よう」と安易に判断してしまうと、治療の遅れが命に関わる可能性もあるのです。
犬や猫の誤飲誤食があった際の対応策や注意点についてより詳しく知りたい方はこちら
<てんかんの原因>
てんかんの原因は、犬と猫で異なる傾向があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
■犬の場合
犬において、てんかんは比較的よく見られる病気で、生後6か月から6歳くらいまでの若い年齢で初めて発作を起こすことが多いとされています。特に以下の犬種では、遺伝的な素因が関与していると考えられています。
・トイ・プードル
・ミニチュア・ダックスフンド
・ビーグル
・イタリアン・グレーハウンド
■猫の場合
猫におけるてんかんの発症は比較的稀です。ただし、油断せずに日々の様子を見守ることが重要です。
痙攣が起きたときの応急処置
いざ犬や猫が痙攣を起こしたとき、飼い主様にまず心がけていただきたいのは、「落ち着いて行動すること」です。発作そのものを飼い主様が止めることはできませんが、以下のような流れで対応することが大切です。
①環境の整備
犬や猫が発作を起こしている場所に、家具の角や電気コードなど危険なものがある場合は、すぐに取り除き、周囲の安全を確保してください。このとき、無理に動かそうとしたり、顔や口元に手を近づけたりするのは非常に危険です。痙攣中は意識がないことが多く、反射的に咬まれるおそれがあります。
②発作の様子を記録
可能であれば、発作の様子を動画で記録しましょう。診察時に獣医師が客観的に症状を確認するための大切な手がかりになります。また、発作が始まった時刻と収まるまでの時間を測っておくことも重要です。持続時間が長いほど、緊急性が高まります。
③動物病院への連絡
できるだけ早く動物病院に連絡し、発作の様子や持続時間、現在の犬や猫の状態を伝えてください。獣医師の指示を仰ぐことで、適切なタイミングでの受診や必要な検査・治療の判断につながります。
④発作後の見守り
痙攣が収まった後も、犬や猫の状態はすぐには元に戻らないことがあります。ふらついたり、ぼんやりしていたり、排尿や排便が見られることもありますが、これらは一時的な反応であることが多いです。水や食べ物を与えるのは、しっかりと意識が戻り、飲み込む力が確認できてからにしましょう。焦らず、落ち着いて様子を見守ることが大切です。
動物病院を受診する判断基準|いつ緊急受診すべき?
痙攣が1度だけで数十秒〜1分程度でおさまり、その後すぐに意識が戻った場合には、少し様子を見てからの受診でも問題ないケースが多くあります。
ただし、以下のような場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・痙攣が5分以上続いている
・痙攣が何度も連続して起こる
・初めての発作である
・発作後も意識が戻らない、あるいは状態が著しく悪い
このような状況では、命に関わる緊急状態の可能性が高く、迅速な対応が必要になります。
もし判断に迷った場合は、無理に自己判断をせず、まずは動物病院に電話で相談することをおすすめします。状況を簡潔に伝えるだけでも、獣医師から適切なアドバイスが受けられるでしょう。
痙攣の診断と検査
診察中に偶然発作が起こる可能性は低いため、痙攣の診断には飼い主様からの詳細な問診情報が不可欠です。受診時には、できるだけ詳細な情報を伝えましょう。たとえば、「どんな動きをしていたか」「どれくらいの時間続いたか」「直前に何か食べたか」「意識はあったか」などが重要な手がかりとなります。
必要に応じて、血液検査やレントゲン、MRI、CTなどの画像検査を実施することもあります。これにより、感染症や腫瘍、中毒など、さまざまな病気の可能性を調べます。
ただし、てんかんの場合、診断は「除外診断」と呼ばれる方法で行います。つまり、他の病気をすべて検査で否定した上で、「これ以上の原因が見つからない=てんかん」と診断されるのです。そのため、確定までには時間がかかることもありますが、正確な診断には必要な過程です。
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まとめ
犬や猫が突然痙攣を起こすと、飼い主様は大きな不安に包まれることと思います。しかし、発作を目の前にしても、まずは落ち着き、安全確保と冷静な観察に努めましょう。発作の様子を記録し、持続時間を測ることで、診断や治療の大きな助けになります。
痙攣の原因はてんかんだけではなく、中毒や脳腫瘍など、命に関わる病気が隠れていることもあります。そのため、「様子を見て大丈夫かも」と自己判断せず、なるべく早い段階で獣医師に相談することがとても大切です。
適切な診断と治療によって、多くの犬や猫は安定した生活を送ることができます。愛する家族の健康を守るために、正しい知識を持ち、いざという時に落ち着いて行動できるよう備えておきましょう。
当院では、痙攣発作に関するご相談や精密検査にも対応しておりますので、気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
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