2025/07/08
「感受性試験って本当に必要なの?」と、飼い主様からご質問をいただくことがよくあります。確かに、普段あまり耳にしない検査であり、「どんなことを調べる検査なのか」「本当に受ける意味があるのか」と不安や疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬や猫が病気になったとき、私たち獣医師は症状の原因を探りながら、適切な治療方法を選んでいきます。その中で「どの抗生物質が最も効果的か」を調べるために行うのが、感受性試験です。この検査は、無駄な薬の使用を避けながら、犬や猫の体への負担を減らし、最短で回復に導くための大切なステップです。
今回は犬や猫の感受性試験について、どのような検査で、なぜ必要とされるのか、そしてどんなときに行われるのかをご紹介します。
■目次
1.感受性試験とは?
2.なぜ感受性試験が必要なのか?
3.どんな時に感受性試験を行うのか?
4.感受性試験を受けるメリット
5.飼い主様にお願いしたいこと
6.まとめ
感受性試験とは?
感受性試験とは、どのような抗生物質が最も効果があるのかを調べる検査です。
たとえば、犬は皮膚炎や膀胱炎など、細菌感染が原因でさまざまな病気を発症することがあります。しかし、ひとくちに「細菌」といってもブドウ球菌や緑膿菌、大腸菌など多くの種類があります。そのため、基本的に最初は多くの細菌に有効な抗生物質を処方しますが、中には薬がなかなか効かないケースがあります。そのような場合には感受性試験を行うことで最も効果のある抗生物質を調べ、効果的に治療することができます。
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感受性試験は以下のような流れで実施します。
①病変部位から採取した細胞を培養して細菌の種類を調べる「培養同定検査」を行います。
②培養同定検査で特定された細菌を抗生物質が含まれた培地で培養する感受性試験を行います。
③感受性試験後、効果のある抗生物質を確認することができます。
また、感受性試験は、院内に専用の設備があれば数日で結果が出ますが、ほとんどの動物病院では外部の検査機関に依頼するため、検査結果が出るまでに1〜2週間ほどかかることが多いです。ただし、その時間をかける価値があるほど、治療の精度を高めるうえで重要な検査といえます。
なぜ感受性試験が必要なのか?
現在使用している抗生物質が、本当に今の細菌に効いているのかどうかは、見た目の症状だけでは判断がつきません。そのため、効果が現れない場合には「そもそも薬が合っていない可能性」があるのです。
このようなとき、感受性試験によって薬の効き目を確認することで、無駄な投薬を避け、治療の方向性を見直すことができます。一方、検査を行わずに薬を使い続けてしまうと、抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」が発生するリスクが高まります。
薬剤耐性菌は、一度発生すると治療が長期化するだけでなく、重症化したり最悪の場合命に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。さらに、人にうつる可能性もあるため、感受性試験で治療効果のある抗生物質を特定することが大切です。
どんな時に感受性試験を行うのか?
一般的に感受性試験が必要とされるのは、以下のようなケースです。
・抗生物質の治療を始めてもなかなか改善が見られない場合
・重篤な感染症、もしくは同じ感染症を何度も繰り返している場合
・他院で長期間抗生物質を使用していた経過がある場合
中でも、他院で複数の抗生物質を使用していた犬や猫が転院してきた場合には、すでに薬剤耐性菌が体内に存在している可能性があります。そうした場合には、早急に感受性試験を行う必要があります。
感受性試験を受けるメリット
感受性試験を行うことで得られるメリットはとても大きなものです。
まず、的確な抗生物質を使うことができるため、治療の効果が高まり早期回復が期待できます。そして、効かない薬を漫然と使わずに済むため、不要な副作用を避けられます。
さらに、結果的には治療期間が短くなったり、複数の薬を試す必要がなくなったりするため、総合的に見ると治療費が抑えられることも少なくありません。
何よりも、無理のない治療計画を立てることができるため、犬や猫の体への負担を減らしながら、安心して治療を進めることができます。
飼い主様にお願いしたいこと
「軽い皮膚炎だから抗生物質を出しておいてほしい」といったご要望をいただくこともありますが、抗生物質の使い方には細心の注意が必要です。また、転院してくる犬や猫の中には、これまでに多くの抗生物質を繰り返し投与されていたというケースも見られます。
そのような場合には、すでに耐性菌ができている可能性もあるため、当院ではまず現状をしっかり見極めた上で、必要であれば感受性試験を実施し、慎重に治療方針を立てていきます。
飼い主様には、不安なことや疑問に感じることがありましたら、どんな些細なことでも構いませんので、遠慮なくご相談ください。犬や猫の健康を支えていけるよう、正確で納得のいく医療を提供してまいります。
まとめ
感受性試験は、単なる検査ではありません。これは、犬や猫にとって最も効果的な治療法を見極め、無駄な投薬を避け、早期回復へと導くための大切なステップです。薬剤耐性菌の発生を防ぎ、将来にわたって有効な治療を受けられる環境を維持するという意味でも、非常に意義のある検査です。
「検査費用がかかるのでは」と心配されることもあるかもしれません。しかし、感受性試験を行うことで無駄な治療や長期の通院を避けられる可能性があり、長い目で見れば経済的な負担も軽くなることが多いです。
そのため、効果的で安全な治療を選択するために、感受性試験のような検査を積極的に取り入れていくことが重要です。もし現在の治療に不安がある場合や、感受性試験についてもっと詳しく知りたいという場合は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
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