2025/06/12
「最近、目やにが多い気がする」「目をしきりに気にしているように見える」そんなふうに感じたことはありませんか?それは、犬や猫の目に何らかの異常が起きているサインかもしれません。
あまり知られていない目の病気の1つに「東洋眼虫症」があります。聞き慣れない病名ではありますが、八王子でも、年に2〜3件ほど実際に発生している病気です。東洋眼虫はハエを介して犬や猫の目に寄生し、重度の角膜損傷を引き起こすこともあります。そのため、早期発見・早期治療がとても大切です。
今回は当院の診療実績をもとに、東洋眼虫症の原因や症状、治療方法、予防方法について詳しく解説します。さらに、いざという時にスムーズに診察を受けられるよう、病院に慣れさせておく大切さについてもご紹介します。
■目次
1.東洋眼虫とは?基礎知識と感染経路
2.東洋眼虫症の症状と発見方法
3.診断方法・治療方法
4.予防方法と日常のケア
5.いざというときのために動物病院に慣れさせておきましょう
6.まとめ
東洋眼虫とは?基礎知識と感染経路
東洋眼虫は体長約1cmほどの細長い糸状の寄生虫で、主に犬や猫の目の中に寄生します。感染の媒介となるのは「メマトイ」という種類のハエです。
メマトイは、感染している犬や猫の涙や目やにを舐めることで、そこに含まれている東洋眼虫の幼虫が体内に入り込みます。その後、メマトイが別の犬や猫の目にとまり、涙を吸うときに、目の表面に東洋眼虫が寄生してしまいます。
寄生部位は、まぶたの裏側や瞬膜(目頭にある白い膜)、結膜などです。東洋眼虫がこれらの部位に潜むと、炎症やかゆみ、痛みなどを引き起こします。
また、感染のピークはハエが活発になる春から秋にかけてで、特に屋外での生活時間が長い犬や猫はリスクが高まります。とはいえ、ハエはご家庭の玄関や窓などからも容易に侵入するため、完全室内飼育の犬や猫であっても油断はできません。
東洋眼虫症の症状と発見方法
感染初期や目に寄生している虫の数が少ない場合は、無症状であることも少なくありません。しかし、寄生虫が増えてくると、次第に以下のような症状が見られることがあります。
・緑色のトロッとした目やにが出る
・目をしつこく掻く
・目をこすりつける
・目を眩しそうに細める
・涙が増える
・白目が赤くなる
・まぶたがピクピクしている
これらの症状が進行すると、重度の結膜炎や角膜潰瘍といった合併症を引き起こすこともあります。
診断方法・治療方法
東洋眼虫症が疑われる場合、まずは問診と身体検査を行います。その際、まぶたをめくって目の中に寄生虫がいないかどうかを確認します。さらに、涙の量を測定したり、角膜に傷がないかをチェックしたりする検査も併せて実施します。
治療では、まず点眼麻酔を行い、虫体が確認できる場合にはピンセットで取り除きます。その後、洗眼処置を行い、目の中を清潔にします。ただし、肉眼で確認できない小さな虫に対しては、フィラリア予防薬を使って体内から駆除します。
また、結膜炎や角膜損傷などの合併症を起こしている場合には、抗生物質や角膜保護作用のある点眼薬で症状を緩和します。角膜の損傷が重度でなければ、一般的に予後は良好です。
予防方法と日常のケア
東洋眼虫症の予防には、フィラリア予防薬が有効と報告されています。そのため、フィラリアの予防シーズンには必ず定期的に投薬を行うようにしましょう。
また、ハエとの接触を防ぐためにも、以下のような環境整備も重要です。
・植木鉢など、ハエを引き寄せやすいものは屋内に置かないようにする
・生ごみの入ったゴミ箱は、フタ付きの容器を使用する
・ハエよけ忌避剤を設置する
・網戸やドアの開け閉めに注意する
・外飼いの場合は室内飼育に変更する
ただし、どれだけ気をつけていてもハエとの接触を完全に避けるのは難しいのが現実です。だからこそ、日頃から目の様子を観察する習慣をつけ、異常を感じたらすぐに動物病院を受診することが大切です。
また、定期的に健康診断を受けることで、目の異変にいち早く気づけるきっかけにもなります。
いざというときのために動物病院に慣れさせておきましょう
犬や猫は言葉で不調を訴えられないうえに、本能的に体調不良を隠そうとする傾向があります。そのため、急に動物病院を受診しなければならないことも少なくありません。
しかし、犬や猫にとって動物病院は非日常の環境であり、ストレスを感じる場所です。特に猫の場合はキャリーケースから出てこられず、診察に支障をきたすこともあります。
そうした事態を避けるためには、健康なうちから動物病院に慣れておくことが大切です。たとえば、定期的に爪切りや健康診断などで通院しておくと、いざという時にも落ち着いて診察が受けられます。
また、動物病院へ連れて行く際には安全面にも十分配慮しましょう。稀に抱っこをして連れて来る方もいらっしゃいますが、慣れない環境や他の動物の声などに驚き、脱走してしまうリスクがあります。迷子や交通事故などを防ぐためにも、犬の場合は必ずリードをつけ、猫は洗濯ネットに入れてからキャリーケースに入れてください。
まとめ
東洋眼虫症はまだ一般的に知られていない病気ではあるものの、八王子や町田エリアでも毎年一定数の症例が確認されています。この病気を放置すると角膜に傷がつき、視力に影響を与えることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
また、病気のときだけでなく、健康なうちから動物病院に通い、慣れさせておくことも大切です。いざというときに落ち着いて診察が受けられるように、日頃から予防医療やケアの一環として動物病院を利用しましょう。
当院では犬や猫の健康を守るために、飼い主様と一緒に最善のケアをご提案しています。気になることやご不安な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
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